夏には夏の暮らし、冬には冬の暮らし
季節に応じて、自然と共に暮らす「暮らし方」をお伝えします

第4回 「暑さの犯人」は、「周囲の表面温度」

第2回で体感温度の話を始める冒頭に、JRのホームでのエピソードを紹介しましたが、どうしてホームの天井の表面温度が高温になっていると、暑く感じてしまうのでしょうか。ここでも、「体感温度は、熱の移動スピードによって決まる」という原理が作用しています。

この場合の「熱の移動」の仕方を確かめる簡単な実験をやってみましょう。これから私がいうとおりのことをやってみてください。
まず、手の表面温度を高くするように、手のひらをこすり合わせてください。手のひらが温まってきたら、手と頬との隙間を1cmくらいの間隔をあけて、顔にかざしてみてください。

どんな感じがしますか? ほわ~っとした温かさを感じますよね。おそらく、皆さんは、手のひらと頬との間の空気の温度が上がったから、温かく感じたのだと思ったのではないかと思いますが、実は、それは違います。手のひらの熱は、空気を通じて移動したのではなく、空気を媒介せずに、直接、放射によって頬に伝わったのです。

放射とは、熱が光と同じような波動として遠くのものへ伝わる現象のことを言います。たとえば、地球が、太陽によって熱せられる現象も放射によるものです。太陽と地球との間の宇宙空間は、空気のようなものは存在しない、真空な状態です。つまり、宇宙には、熱を伝達するような物質はないのに、遠くの太陽からの熱は、地球に到達します。そうした遠く離れたものからの熱が、ポーンと飛び出してきて伝わる現象を、放射というのです。

太陽からの放射による暖かさ(暑さ)は、光とともに伝わってきますから、誰にとっても目に見える、なじみのあるものですが、目に見えず、知らず知らずのうちに、放射の影響を受けてしまう場面が沢山あります。そのいい例が駅のホームでの暑さです。表面温度の高いもの(天井)からは、目には見えない熱がこの放射によってポーンと飛びだしてきます。そしてその放射が私たちの体にぶつかって、暑く感じるのです。

たとえば、クーラーのよく効いている電車の中で、人が近づいてきた時に、「このひと、体温が高いな!」と瞬間的に気づくようなことがありませんか。そして、「いやだなぁ。もうっ! 近づかないで欲しいなあっ!」と、おもわず心の中でさけんでしまうような経験を皆さんお持ちではないですか?これも放射によるものです。体温の高い人の周りの空気が温まっているわけではなく、その人の体から、熱がポーンと飛び出してきて、自分の体に伝わるから暑く感じるのです。

【おおよその体感温度の算出方法】
こうして私たちが日頃感じている体感温度は、放射の影響を受けるため、周囲にあるものの表面温度に驚くほど大きく左右されます。その影響を加味した体感温度は、次の計算式で算出することができます。

体感温度 ≒ ( 気温 + 周囲の表面温度 ) ÷ 2

つまり、体感温度は、「気温」と「周囲の表面温度」との平均値となるのです。このことがわかると夏の暑さが、いかに大きく周囲のものの表面温度によって影響を受けているのかが理解できるようになります。

たとえば、駅のホームでの場合は・・・

駅のホーム体感温度例題

という計算で、なんと体感温度は、40℃近くにもなってしまうのです。
そして、天井の温度が熱くなっていない階段の下にはいると・・・

駅のホーム体感温度例題

という計算で、同じ駅のホームでもちょっと場所を変えるだけで、体感温度は10℃も違ってしまうのです。

このように、同じ気温でも、場所が違うだけで体感温度が全く違うということが、こうした例以外にも多くあります。

次回は体感原理にもとづいた暑い家の改善方法をご紹介します。ぜひご覧ください。



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