フライブルグ大学に森林学を学びに留学している竹内景子さん(通称・たけこ)の留学記です。直に感じたドイツの最新事情やドイツで感じたことなどを紹介しています。

2001.6.13

第1回 ドイツ留学を決めるまで 

第1回 ドイツ留学を決めるまで

第2回 フライブルグ市のVaubanにおけるまちづくり

 

 

ドイツ留学を決めるまで  

私は日本で建築学科に在籍していました。建築はたくさんの人が集まって一つの物をつくるという、私の最も好きな分野です。同時に環境問題についても関心が強くありました。建築の勉強を進めてゆくうちに環境共生住宅やコーポラティブ住宅、また小さい頃からアトピー性皮膚炎に悩まされているため、健康住宅にも自然と目を向けるようになります。
幸運なことに、その興味を持ち始めた頃に建築学生でおこなうワークショップや、地元企業の勉強会などに参加することになりました。また、この問題を学んでゆく上でどんどん、多方面からのアプローチの重要性、それに伴う複雑さを実感することになります。

母の実家は岐阜県上矢作町というところです。また父方の祖父は長野県根羽村出身です。環境問題を勉強する前は、山や川の美しさにばかり目を奪われていました。私の生まれ育った知多半島にも豊かな自然がたくさんあります。森も宝モノを隠したり、秘密の場所を作ったりする絶好の遊び場でした。しかし、それとは全く違った山の姿は私にとってまさしく自然でした。私がもの心ついたときには既に、どちらの町も林業は衰退し、祖母や母から聞く昔の林業が盛んであった頃の活気のある町を小さい頃はどうしても信じることができませんでした。しかし父の趣味である鮎つりを通して知り合った人々の語る林業が盛んだった頃、生きていた森、そして今…どれも環境の情報をもってあらためて聞いたとき、初めてショックを受けました。国産材の使用率低下による林業の衰退、人口の減少、手の入らなくなった山、そして毎年のごとくおこる鉄砲水。そういったことの一つ一つがどの本をよりも、現実に迫ったものとして私に迫ってきました。そして釣り人が季節の終わりに川にお神酒をささげること、自然の前で人間の優しさ、そういったことがよりはっきりとした輪郭をもって私の中で動き始めます。
同時期にドイツの環境対策について知ります。林学がドイツからやってきたことも。

留学は中学生の頃からの夢でした。まさかドイツに行くとは思っていませんでしたが…
大学3年の秋就職活動で同級生がリクルートスーツに着替える中、私は希望調査に「ドイツ留学」と書き込みました。

書ききれない、思いがたくさんありますが、一言でいってしまえば「山と日本が好き」ということにつきます。誰にも教えられていないのに、自然を見れば感動するし、山々や海に人間とは違う力を感じます。そんなことを感じられる日本という国に育ったことは私にとってとても嬉しいことです。留学後は日本に戻り森林に関する仕事をしたいと思っています。

環境都市として名高いフライブルグを紹介します。

フライブルグが今のように環境優先都市になったのは、大きく分けて2つの理由があります。

1つ目は、グリム童話にもよく出てくる黒い森です。ドイツ人にとって森はとても重要な意味を持っています。多くの人が休日には'散歩'と称して4,5時間森を歩いたりします。私のドイツ人の友達は「森がドイツになかったら、ゲーテもシラーも普通のひとだった。」と言います。体の休息、心のリフレッシュ、あるいは哲学、文学… その森は近代化の波によって大きく変わることになります。黒い森へ酸性雨の影響が出るようになります。とくに降水量が多いこと、ヨーロッパの風は西から東へ流れるため、黒い森はドイツにおける最初のバリケードの役割をするためです。私も、講義で森に頻繁に行きますが、枯れてしまったが多くあります。森を愛する国民性が、環境問題の重要性に気づかせます。

2つ目は、1970年代初めに計画された原子力発電所に対する反対運動です。反対するだけでなく、その危険性、それに代わるエネルギーなどの討論が行われ、この発電所計画は住民側の勝利となります。

大きくこの二つの理由が初めとなって、フライブルグは環境政策に力を入れて行くようになります。

フライブルグで思うこと
 
渡独したのは、2000年6月。フライブルグはドイツの中で最も夏が一番早く訪れるところです。ヨーロッパの夏は短く、それだけに木々や花々はこの季節を楽しんでいるように感じます。もちろん人々も。冬の低い空からは考えられない、青空と萌える緑のコントラストは、日常のことながら感動します。
 フライブルグに来る前に、日本で出版されている本、インターネットからの情報などから環境政策についての基礎知識はもっていました。そこで私が見たものは…

 私がびっくりしたことは、タバコの投げ捨て、犬の糞、そして自転車の多さです。歩きながらタバコを吸い、終わったら道にすてて歩いてゆきます。日本の公園には最近見ることの少なくなった犬の糞もここでは日常です。また、自転車の多さは想像以上でした。同時に自転車道の整備のよさ、自転車の優先権の確立は日本とは比べ物になりません。私も自転車で大学へ通っています。最初は車と同じように左折することが怖かったですが、いまではとても快適です。
 

ドイツ人と話す機会が増えるにつれ、実際に彼らが感じていることを聞くことができるようになりました。ある人は、(私が環境を学んでいることを知らず)「フライブルグはやりすぎだ。まちのいたるところに、ゴミ箱があってうんざりする。」またあるひとは、「もっと厳しくするべき。」と言います。
 

もちろんいろんな考えの人がいるのがあたりまえです。でも、フライブルグで環境政策がある程度成功していて、実際に効果もあるという事実は、日本にもそれがあてはまると言えるのではないでしょうか?
 

ドイツの森林率は30%、日本は67%を誇っています。ドイツ人が森を愛して、環境対策に積極的になっているのなら、私たちは、森も海も川もある日本の何を愛するのでしょう。

 

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