夏には夏の暮らし、冬には冬の暮らし
季節に応じて、自然と共に暮らす「暮らし方」をお伝えします

第3回 「体感ってそういうことか」と誰もが驚く実験

体感原理がわかると、なぜ自分の家が暑いのか、そして、どうすれば涼しくすることができるのかがわかるようになります。ここで、その体感原理を理解するのに役立つ実験をしてみたいと思います。

この実験では、二つの素材が違うものを用意します。ひとつはステンレス製のフライパン、もうひとつは乾いたタオルです。このコラムを読んでいる皆さんも、ご自分のフライパンとタオルとを用意して、読み進めながら、この実験に参加してみてください。誰もが必ず「目からウロコ」となることを請け合いますので、面倒だと思わずに、是非準備をしてみてください。

準備できましたか?
では実験を開始します。

フライパンの裏底と、タオルの布地、それぞれに自分の手を押し当ててみてください。
どっちが冷たくて、どっちが温かく感じますか?
おそらく誰もが、フライパンの方が冷たいと感じると思います。
では、ここで皆さんに質問をします。フライパンとタオルの温度差は何度ぐらいだと思いますか?
次の中から選んでください。

①温度差は、1~2℃くらいだと思う。
②温度差は、3~4℃くらいだと思う。
③温度差は、5~6℃くらいだと思う。
④温度差は、それ以上だと思う。

いかがですか? 個人差があると思いますが、多くの人が②や③を選んだのではないかと思います。では、実際には、温度差は何度なのかを確認してみたいと思います。ここで重宝するのが、第2回のコラムでご紹介した赤外線放射温度計です。

とは言っても、皆さんの手元には、この計測器はないと思いますので、実際に測った結果を報告いたします。

フライパンの裏底の表面温度は、25℃。
タオルの表面温度は、25℃です。

フライパン25度タオル25℃
えっ!……

誰もが、「フライパンの方が冷たい」と感じましたよね。
なのに、温度は全く同じ。温度差は0℃です。
不思議ですよね。なぜなんでしょう?
ここに、体感原理のヒントがあります。

まず、なぜどちらも同じ温度なのかというと、それは、どちらも同じ室温の同じ条件の場所にあるからです。つまり、皆さんの今いるその部屋の室温が25℃なら、その室内にあるものは、素材が違っても、すべて25℃だということです。

この実験で気づくことのできる重要なポイントは、「体感温度」と「実際の温度」とは、イコールではないということです。つまり、実際は同じ温度でも、温かく感じたり、冷たく感じたりすることがあるということです。このことは、次のことをイメージすると「なるほどっ!」と、誰もが納得できるはずです。

今皆さんは、室温25℃の部屋にいるとします。どんな感じですか。暑くも寒くもなく、ちょうどいい感じですよね。では、今度は25℃の水風呂に浸かるとしたら、どう感じるかを想像してみてください。きっと、耐えられないくらい冷たく感じますよね。そのまま水の中に10分くらい浸かっていたら、おそらく体が冷えきってしまって、唇は紫色になって、ブルブルと震えだして、体を壊してしまうかもしれません。この場合、気温25℃と水温25℃と、どちらも全く同じ温度です。なのに体感温度は、全く違うわけです。

「では、体感温度は、何によって決まるのか?」という疑問が湧いてきますよね。それでは、いよいよ体感原理の種明かしをしましょう。
体感温度は、「熱の移動スピード」によって決まるのです。
自分の体から逃げていく熱の移動スピードが速いと冷たく、遅いと温かく感じるのです。

なぜ同じ温度なのに、フライパンを触ると冷たく、タオルは温かく感じたのか。それは、熱の伝導率(熱の伝えやすさ)の違いによるものです。鉄などの伝導率の高いものを触ると、手のひらから熱は速く移動します。この速さが「冷たい」といった感覚をもたらすのです。一方、タオルなどの空気を多く含んだ素材を触ると、空気は熱を伝えづらい性質があるため、「温かく」感じるのです。

では、なぜ25℃の空気中では寒くなくても、同じ25℃の水の中では冷たく感じるのか。それは、空気に比べて水の「熱を運ぶ力」が大きいためです。水は、大量の熱を移動させることができますから、水の中に浸かった瞬間に、体から大量の熱が奪われ(移動して)、耐えられないくらい冷たく感じるのです。

次回はこの体感原理をもとに、暑さの犯人にせまります。ぜひご覧ください。



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